阿部由夏里さん/株式会社丸井グループ

アイメイト(盲導犬)使用者には、おしゃれを楽しんでいる方がたくさんいます。「目が見えないのになぜ?」と思われるかもしれませんが、自分に似合う服を着たいという気持ちは同じです。

 

今回、取材させていただいたのは、株式会社丸井グループ。年齢や性別、障害に関係なく、すべての人が楽しく安心して買物できるように、売り場に立つ社員のほとんどが、「サービス介助研修」を受け、障害者や高齢者などを積極的にサポートしています。

 

お話を伺ったレディスシューズリーダー阿部由夏里さんは、「サービス介助士」の資格を取得、実際にアイメイト(盲導犬)使用者を始め、障害のある方のサポートをしています。

レディスシューズリーダーでサービス介助士の資格をもつ阿部由夏里さん

 

丸井ならではのサポートを目指して

——— 企業として、アイメイト(盲導犬)使用者など障害のある方たちのサポートに取り組まれるようになったきっかけを教えていただけますか?

丸井グループとして、障がいがある方も含めた「すべての人」がしあわせを感じられるインクルーシブで豊かな社会をめざしてきました。その中で、視覚障がい者向けのイベント「サイトワールド」が、丸井錦糸町店が入っているビルの8、9階にある「すみだ産業会館」で毎年開催されており、そこで丸井が何か出来ることはないかと考え、ウインドーショッピング体験や「アテンドしますから丸井でお買い物をしませんか?」などお声がけをする取り組みを始めました。

 

——— 取り組みを始めてどうでしたか?

アテンドするまでは、視覚に障害がある方は「色がわからないしお洋服もあまり気にされないだろう」と勝手に思い込んでいたんです。しかし実際には、コーディネートを気にされて、アドバイスを求めてくださる方が非常に多かったんですね。そういう意味では、スタッフがお色やコーディネートのアドバイスができる丸井ならではのサポートができるのではないかと考えました。

 

——— 色を言葉で伝えるのは難しくありませんか?

確かに色を言葉で伝えることはとても難しいと感じています。「ブルーはどう説明したら伝わるか」といったことが、スタッフ同士の話題に上ります。「空の色」と説明することもあれば、「さわやかなイメージです」と見る側からの印象をお伝えすることもあります。また、「年配の方に人気のお色です」「お客様くらいの年代の方に人気の色です」などと説明する場合もありますね。どんな説明をする場合も、できるだけ具体的にお伝えするように心がけています。

 

美意識の高さに感動

———アイメイト(盲導犬)が一緒にいる時、対応に違いはありますか?

以前、盲導犬を連れた40代後半の女性のお客様をご案内させていただきました。ふだんから丸井錦糸町店をよく利用されているということで、改装されたフロアにご案内した時に、「前と雰囲気が変わったわね」とおっしゃって、とても驚いたのを覚えています。その方の頭の中に、店内の地図が出来上がっていたのですね。

その方は、「紫外線が気になるから」とUV加工の帽子や、レディースパンプスをご購入いただきました。また、ご要望があったのでネイルサロンにご案内しました。視覚障害があっても、ネイルに気を遣われる美意識の高さにも感動しました。

 

——— おしゃれな方だったのですね。

このお客様にはとても喜んでいただいて、私自身の接客の幅が広がったという自信がつきました。接客の仕事は、お客様に「ありがとう」と言っていただくことで、「明日もがんばろう」というモチベーションにつながりますからね。

 

私はシューズの担当ですが、私がアテンドしたお客様が、洋服など他の売り場で買い物されている姿をお見かけすると、あえてお声がけはしませんが、内心、とてもうれしいです。

視覚障害者にアドバイスする阿部さん

 

まずは見守る。そして、必要なタイミングを見計らって声かけ

——— 店内でアイメイト(盲導犬)使用者を見かけたら、どうされますか?

まずは見守ります。そのうえで何かお困りの様子を感じたら、タイミングを見計らって声をかけるようにしています。一人でお買い物が出来るなら、そのほうが気楽な場合もあると思うんです。先ほどの私がアテンドした方も、「買い物は一人でできるけど、細かいところで質問があったのでサポートを頼んだんです」とおっしゃっていました。お客様が必要なときに、必要なお手伝いをさせていただきますので、気軽にお声がけいただいて、お買い物を楽しんでいただければと思います。

 

———盲導犬が入店することで、他のお客様からクレームはありますか?

犬の毛が抜ける、匂いがするなどの苦情を言われたことは一度もありません。逆に、「名前は何て言うの?」などと声をかけたり、動物が好きだからとつい触ったりといったシーンに出くわすことがあります。盲導犬に対する知識やお仕事中であるという認識が広まれば、使用者の方はもっと気軽に買い物したり、外歩きしたりしやすくなるのではないかと思っています。

丸井錦糸町店で実施されたアイメイト研修の様子

 

丸井錦糸町店で実施されたアイメイト研修の様子

 

——— アイメイト(盲導犬)使用者が、丸井さんの店舗でアテンドして欲しいと思ったら、どうしたらよいのでしょうか?

インフォメーションには必ずスタッフがおりますので、「アイメイト(盲導犬)を連れているので、サポートをお願いします」とお申し出ください。もしそのスタッフがアテンドできなくても、例えば「スーツが欲しい」と言っていただければ、スーツに詳しく、さらにサービス介助士をもっているスタッフ(資格がなくてもほぼ100%のスタッフがサービス介助研修を受講済み)がお迎えにあがります。

 

——— ありがとうございました。

2019年2月8日公開