アイメイト協会の事業は、たくさんのボランティアの方に支えられています。今回お話を伺ったのは、千葉県にお住いの斉藤裕見子さん。子犬を約1年間預かる飼育奉仕をした後、現在は不適格犬を1頭、飼育してくださっています。
飼育奉仕のきっかけは自らのペットロス
——— 飼育奉仕を始めたきっかけを教えてください。
以前、バーニーズ(・マウンテン・ドッグ)という大型犬を飼っていたのですが、若いうちに病気で亡くなってしまいました。大型犬に惹かれたのは、会社(フードメーカーであるバンガードインターナショナルフーズ)で、普段から何頭もの大型犬を見ていたからでしょうか。性格がのんびりしていて、穏やかでいいなって思ったんです。
——— 犬を連れて出勤できる会社だそうですね。
はい。ですから、家はもちろん仕事中もいつもすぐ横にいました。とても大きな子でしたから、いなくなったら、心にぽっかりと穴が開いたみたいで……。ちょっとしたペットロスに陥って、「もう2度と犬は飼わない」って思っていました。そんな時、アイメイト・デーに出かけて、アイメイト(盲導犬)を間近で見る機会があったんです。
——— アイメイト・デーには、全国から何十組もアイメイトペアがいらっしゃっていますよね。
どのアイメイトもみんなとても優秀でいい子ばかり。感動しました。その時、飼育奉仕やリタイア犬を飼育している方の話に興味を持ったんです。自分が育てた子犬が将来誰かの役に立つのはとても素敵なことですし、子犬の飼育なら、悲しい別れもありませんからね。
——— それで飼育奉仕に申し込んだんですね。
はい。アイメイト・デーから帰ってきて、すぐに申し込みました。もう辛い思いはしたくなかったので、1年飼ってお返ししたら、また次の子を育てたいと協会にお願いしたんです。
子犬が来て、あらためてアイメイトは「すごい」と実感
——— どんな子犬だったのでしょう?
すごくかわいくて、申し込んでよかったって思いました。子犬ですからもちろんイタズラをする時もありますが、とても賢くて、性格がとても温和なんですね。ある程度大きくなってからは会社に連れて来ることもありましたが、その頃は多い時には6~7頭の犬が“出勤”していましたからね。でも、空気が読めるっていうんですかね。先輩たちに気を遣っていたし、1度叱られると、2度と同じことはしませんでした。改めて、アイメイトはすごいと感じました。
——— 別れはつらくありませんでしたか?
わかっていたことですが、やっぱり寂しくて泣いちゃいました。
その瞬間は、とても不思議な気持ち
——— 今、ここにいる子は?
実は、この子はその時に飼育していた子犬なんです。協会に戻って訓練に入ったのですが、3カ月くらい経ってから連絡があって迎えに行きました。涙、涙のお別れをしたんですけれどね(笑)。
——— 訓練に入っていたんですよね。
訓練は順調に進んでいたそうですが、体質の関係で候補から外れたということでした。子犬の時からとても賢かったので、絶対にアイメイトになると信じていましたからね。私のところにまた戻って来ると決まった時は、うれしいやら残念やら、とても不思議な気持ちでした。
——— 複雑なお気持ちだったでしょうね。
協会に迎えに行ったら、この子、「なんで来たの?」みたいにキョトンとしていました。家に戻った次の日からは、もうここが自分の家だってわかったようで、それからは普通にしていました。
いつもわが家の中心に
——— 今も、毎日会社に連れてきているんですか?
私の担当する仕事が以前と変わったので、最近はあまり連れてこられないんですよ。
——— それはちょっと寂しいですね。
この子も会社に来たいみたいなんですけどね。今日はここに来るってわかったようで、とても喜んでいました。たまに、事務所でパソコン作業をする時に連れてくると、ずっと横に座っていてくれます。今日は、うちのスタッフも久しぶりにこの子に会えてとても喜んでくれました。
——— 一緒に通勤できるなんて、うらやましい会社ですね。
子供たちも巣立って夫と2人になりましたが、この子がいてくれるおかげで、夫婦仲も保たれているんだろうなぁと思っています(笑)。すべての生活がこの子を中心に回っているんですね。だから、どこに行く時も泊まる時も、この子を連れていける場所を探すんです。
——— すごくお幸せそうですね。
いいのかなと思うんですけど、今は、「奉仕」とか「ボランティア」とかいう感覚はまったくありません(笑)。この子がいっぱい幸せを運んできてくれていますから。この子に癒やされるし、この子がいるからがんばれるんだと思います。
——— ありがとうございました。
2019年2月19日公開