矢吹洋平さん/西武鉄道株式会社

アイメイト協会では、2017年7月から、アイメイトの実践的な訓練場所として、西武鉄道の駅や電車を利用させていただいています。

駅構内での実践的な訓練

 

今回は、西武鉄道株式会社 鉄道本部運輸部お客さまサービス課主任の矢吹洋平さんに、アイメイト(盲導犬)使用者などへの対応、また駅係員の案内のスキル向上のための教育制度などについて伺いました。

障がいをお持ちのお客さまへの接遇教育を担当する矢吹洋平さん

障がいをお持ちのお客さまの気持ちを実感

——— 企業として、どのような考えのもと、アイメイト(盲導犬)使用者などへの支援をされているのでしょうか?

今年(2018年)5月に、国土交通省から「交通事業者向け接遇ガイドライン」が公表されましたが、それ以前から「でかける人を、ほほえむ人へ。」をスローガンに、積極的に障がいをお持ちのお客さまの支援をしてまいりました。そのために、社員、特に駅の係員に対しては、入社時と異動時などに実地を交えた入念な研修を実施しています。

 

——— 具体的な研修内容を教えていただけますか?

入社時には、知識の習得を目的とした机上研修と研修センター内を実際に歩くなどの体験訓練の両方を行います。特に体験訓練では、目の不自由なお客さまをはじめとする障がいをお持ちのお客さまの気持ちを理解したうえでご案内できるように、アイマスクを着け、白杖を手に歩いたり、車椅子を使用しての移動といった体験をします。

 

また入社後、単独業務開始前には、西武球場前駅にて実際の車両を用いて、通常の駅と同じ状況を作り、アイマスクをしてホーム上を歩くなどの体験を行います。

西武鉄道では、アイマスクをしてホーム上を歩く体験を実施

 

また、定期的に現業の係員の中から何人かを指名して、再度、座学や研修センターでの体験などの教育を繰り返し実施しています。

 

——— 実際に研修を受けた社員の方はどのような感想を持たれていますか?

アイマスクをして階段の上り下りの体験を行いますが、「アイマスクをして階段の上り下りなど歩行することがこんなに怖いとは思わなかった」という声が聞こえます。アイマスクをしていると、フラットな場所でも前に進むのが難しい状況ですから、階段となればなおさら、受講者はビクビクしながら歩いています。私も体験しましたが、本当に怖かったことを覚えています。前が見えずにとても怖い思いをしました。

ホームから電車への乗降なども、アイマスクをして体験

 

ご案内は、お客さまの意向を伺って

——— アイメイト(盲導犬)使用者に対しては、どのようなお声がけ、対応をされるのでしょうか。

アイメイト使用者の方は、自主的、積極的に動かれているお客さまがほとんどなので、直接ご案内する機会は極めて少ないように思います。とはいえ、券売機でチャージをする時にお困りだったり、改札口で迷われていたりする場面を見かけた時は、積極的にお声がけするようにと教育しています。

お困りの様子を見かけたら、積極的にお声がけ

 

——— 声をかける時に、注意されていることはありますか?

まずは、「西武鉄道●●駅の係員●●ですが、お手伝いできることはありますか」と名乗ること、そして、明るくメリハリのある声でお声がけすることを意識しています。そうすることで、係員が自分に声をかけているということをお客さまに認識していただけますから。

 

ご案内する時は、例えば階段とエレベーターのどちらを利用されたいのか、お客さまのご意向を伺うように指導しています。できる限り「こちらのほうが安全です」などのご案内にとどめ、自分たちの考えを押しつけたり、強制したりすることのないように気を付けています。

 

——— お客さまはどんな反応をされますか?

実際にお声がけをすると、多くのお客さまは「声をかけてもらって助かった」と言われますが、なかには「何度も声をかけなくてけっこうです」と言われる方もいらっしゃいます。最近は鉄道会社全体で、「障がいをお持ちのお客さまに積極的に声をかけよう」という動きがあるので、お客さまの状況をよく観察することが大切だと思っています。

 

定期的にご利用になるお客さまについては駅で共有されていますから、ご挨拶をしたり、「今日は早いですね」などお声がけしたり、お客さまといいコミュニケーションがとれているように感じています。

 

アイメイトの訓練を目にすることで意識が変わっていく

——— アイメイト協会に訓練場所をご提供いただくようになって変わったことはありましたか?

白杖をお持ちだったり、車椅子をご利用されていたりするお客さまは、どこの駅でも頻繁にご案内することがあるのですが、実は、アイメイト(盲導犬)使用者の方をお見かけする機会は少なかったんです。

 

今は、アイメイトの訓練を実施する際には、事前に駅に周知をしますから、係員は実際の訓練を間近で見ることにより、目線がアイメイト(盲導犬)使用者のお客さまにも向くようになったと思います。実際に若い係員が「こういう訓練をしているのですね」と話しているのを聞くことがあります。

ご案内はお客さまの意向を伺い、必要があれば手引きも

 

——— 研修のご担当者として、これから力を入れていきたいことはありますか?

当社の「でかける人を、ほほえむ人へ。」というスローガンを基に、現状やっていることはこのまま続けていきます。また、アイメイト協会さまと繋がりもできましたので、「こういう風にした方がいい」などアドバイスを現業の教育に落とし込んでいきたいと考えています。

 

——— ありがとうございました。

 

2019年2月1日公開