アイメイト使用者に出会ったら

優しく見守ってください

多くのアイメイト使用者(視覚障害者)は、「目は見えなくても、できる限り自分の力で解決したい」「多少時間がかかったとしてもできることは自分でしたい」と考えています。だから、もし街でアイメイト使用者を見かけたら、まずは、少し離れたところから優しく見守ってください。何かサポートしたいと思われたときも、できるだけすぐに手を出さずに、どうすればよいのか、声で教えてください。じれったく感じることがあるかもしれませんが、視覚障害者にとっては、次にひとりでできるようになるための、大切な時間です。その時間を一緒に過ごしていただけないでしょうか。

アイメイト使用者が話す「こんなサポートがうれしい」

「目の見えない私たちは、誰かに助けを求めたくても、どの方向に声をかけていいのかわかりません。そんなとき、『何かお手伝いできることはありますか?』と声をかけてもらえると、ほっとします」
「雨が降っていて、車や人の流れや音から判断できず、横断歩道の真ん中で立ち往生してしまったとき、『もうすぐ信号が赤に変わりますよ』と声をかけてくれた方がいて、歩き出すことができました」

「電車に乗ろうとしたとき、『この駅は、ホームと電車の隙間が大きいので、気をつけてください』と教えてくれたので、安心して電車に乗れました」

「最近の駅は自動改札が多いので、どこから入ったらいいのか迷っていたら、『そこから3つ目の改札から中に入れますよ』と声をかけてくれた方がいました。特にラッシュのときなどはこういう声かけに救われます」

「声をかけるときには、「通りかかった者です」「この駅の駅員です」などご自分がだれなのかを伝えていただけると助かります。」

声のかけ方 サンプル集

サポートの初めの一歩は、声をかけることです。「何かお困りのことはありませんか?」と、見える人から積極的に声をかけましょう。「あなたをサポートしたい」という気持ちをアイメイト使用者に伝えると同時に、使用者がどんなサポートを必要としているかを丁寧に聞くことが大切です。

屋内や駅の構内など

アイメイトは階段やドアを探すことができます。例えば、アイメイト使用者は、「駅の近くに来たな」と思うと、アイメイトに「ブリッジ(階段を探せ)」という指示を出し、アイメイトは、階段を探し、上り口・下り口まで行って知らせます。しかし、駅のホームなどで階段の裏側に入り込んでしまうと、階段やエスカレーターが見えないことがあります。その場合は、アイメイトも階段の位置がわかりませんから、階段を探すうちにホームの端に近づいてしまうことがあります。

階段付近にて

こんな風に声をかけてもらうとアイメイト使用者はうれしい

  • 「進行方向と逆方向に、下り階段がありますよ」
  • 「改札に向かう上り階段は、後ろの方向に歩いて行って、右回りに回り込んだところにありますよ」
  • 「この場所は階段がわかりにくいので、そこまで一緒にいきましょうか? 手引きしましょうか? それとも声で誘導しましょうか?」

迷っていたり、どこにいるかわからなくなってしまったりしている時は、誰しも不安なものです。アイメイト使用者もアイメイトも、なんとなく不安気な表情になっているはずです。そんなときはなにかぜひ、一声「何かお手伝いしましょうか」と声をかけてみませんか?

  • 「正面に上り(下り)の階段がありますよ」
  • 「この階段は左回りですね。踊り場についたら左です」
  • 「正面の上り階段の途中で、通路の幅が変わりますから、気をつけて上ってください」◎「この階段には踊り場が2カ所ありますよ」
  • 「ここで階段は終わりです。●●に行くなら、右の方向ですよ」

階段があるだけではなく、上りなのか下りなのかもぜひ一緒に伝えてください。「階段」という言葉だけでは、上りか下りかアイメイト使用者には伝わりません。また、踊り場の先がまっすぐなのか左右どちらの方向なのか、あるいはそこで階段が終わるのかなども、見えるからこそわかる情報です。

こんな風に声をかけられるとアイメイト使用者は困る

  • 「階段? あっちにあるよ」

目の見えないアイメイト使用者には、「あっち」がどちらなのか見えません。アイメイト使用者の右後ろに立ったイメージで、左右、東西南北、またはクロックポジションを使って、言葉で説明してくださいね。

クロックポジションの参考動画

ドア付近にて

出入口を探す「ドア(ドアを探せ)」のときも、階段を探すときと同様に、アイメイトはアイメイト使用者の指示によって、お店などの出入口や扉を探し、鼻先で指して知らせます。

こんな風に声をかけてもらうとアイメイト使用者はうれしい

  • 「この自動ドアは、中央に手をかざすと開きますよ」
  • 「このドアは引き戸です。取っ手は右の方にあって、左にスライドさせると開きます」

アイメイトが無事ドアを見つけると、アイメイト使用者はとてもうれしい気持ちになります。そして主人から褒められているアイメイトもとてもうれしそうです。ぜひ、代わりに開けてあげるというサポートではなく、言葉でドアの位置を伝えてください。

エスカレーター付近にて

アイメイトは、エスカレーターを探すことも、一緒に乗ることもできます。しかしまれに、上りと下りのエスカレーターを間違えて、乗口や降口に向かって行ってしまうことがあります。

こんな風に声をかけてもらうとアイメイト使用者はうれしい

  • 「盲導犬を連れた方、止まってください。上りのエスカレーターは右側ですよ」
  • 「危ない! ストップ! 盲導犬を連れた方、それは下りのエスカレーターですよ」

アイメイトは、エスカレーターの乗口では必ずいったん止まります。アイメイト使用者は、アイメイトが止まることでエスカレーターを認識し、手すり(ベルト)に手をかけて確認します。そしてアイメイトを褒めて、指示を出して、それから乗り込みます。

また、アイメイト使用者は、エスカレーターの段差がだんだん狭くなったり、手すり(ベルト)の角度が変わったりしてくることで、エスカレーターの降口が近づいてくることを理解します。

エスカレーターを安全に利用するために、見えている方以上にアイメイト使用者には時間がかかってしまうことを理解してください。そして、危険が差し迫っていると感じたときは、遠くからでも大きな声で「危ない!」と知らせてください。

エレベーター付近にて

勤務先や自宅のあるマンション、駅構内、デパートなど、アイメイト使用者がエレベーターを使う機会もよくあります。

こんな風に声をかけてもらうとアイメイト使用者はうれしい

  • 「今、上りエレベーターが到着しました」
  • 「下りのエレベーターが来ましたよ。乗りますか?」
  • 「到着したエレベーターは空ですよ。すぐ乗れますよ」
  • 「何階に行かれますか? ボタンを押しましょうか?」
  • 「今、●階に到着しましたよ」
  • 「私は先に降りますが、●階のボタンは押してありますよ」

エレベーターに音声案内がなく、液晶やランプで表示されるだけの場合、アイメイト使用者は、操作盤の行先階や扉の開閉などの情報を確認することができません。また、エレベーターを待っている時に、エレベーターが到着しても、そこから人が降りてくるのか、誰も乗っていないのかなども、瞬時に判断することができません。

  • 「今、エレベーターのドアが開きましたよ」
  • 「今、エレベーターから降りる人がいます。ちょっと待ってくださいね」
  • 「盲導犬の方、もうエレベーターに乗り込んでも大丈夫ですよ」

その場にいる人が、実際に目で見た情報を伝えてあげることで、アイメイト使用者は自分で判断して、次の行動を選択できます。

こんな風に声をかけられるとアイメイト使用者は困る

  • 「早くしてよ!」

そう声をかけられて、あわててエレベーターに乗り込もうとして、転んで怪我をしてしまう可能性もあります。アイメイト使用者がエレベーターを安全に利用するためには、見えている方以上に時間がかかってしまうことをご理解ください。

駅のホームにて

ホームで白線より外側を歩いていたり、ホームの端に向かっていたり、電車とホームの間が広く空いていたりしたときは、見えていることを声に出して伝えてください。

こんな風に声をかけてもらうとアイメイト使用者はうれしい

  • 「ホームと電車の間が広く空いていますよ」
  • 「あなたが歩いているのは白線の外側です。電車が来ると危ないので、もう少し内側に入ってください」
  • 「その先がホームの1番端です」

ふだん利用する駅と違う駅を利用する時は、アイメイト使用者も緊張します。また、自分の立ち位置がわからないと、アイメイトに指示を出すことができなくなってしまいます。どうぞあなたの目で見えた「危険」を、優しく伝えてあげてください。もし、利用している駅や時間が同じなら、自分の立場や名前を伝えたうえで、「おはようございます」「よく会いますね」「今日はいいお天気ですね」など、声をかけてみてください。知っている人がいるだけで、アイメイト使用者は心強く感じます。

電車の車内にて

アイメイト(盲導犬)使用者は、電車やバス、飛行機などの公共交通機関をいつでも自由に利用できます。実際に、通勤・通学はもちろんのこと、趣味や旅行など、電車に乗る機会は多くあります。

こんな風に声をかけてもらうとアイメイト使用者はうれしい

  • 「もう少し右に、手すりがありますよ」
  • 「正面の席が空いていますよ」
  • 「すぐ右の席が空いていますよ」

電車が動き出す前に、手すりの位置や空いている席を伝えてください。

  • 「次の駅で降りますから、どうぞこの席に座ってください」

アイメイト(盲導犬)を連れていると、親切な気持ちから席を譲ってくださる方がいらっしゃいます。ひと言声をかけていただければいいのですが、実際には、黙ったまま立ち去られてしまう方も少なくありません。しかし、アイメイト使用者は、目が見えないので席が空いたことに気づきませんし、「ありがとう」という感謝の気持ちを伝えることもできません。アイメイト使用者に席を譲る時には、「どうぞこの席に座ってください」「席を空けましたので、どうぞここにおかけください」など、ひと声かけてくださいね。

こんな風に声をかけられるとアイメイト使用者は困る

  • 「この犬、かわいいわね」
  • 「お仕事をしていて偉いわね」

目には見えませんが、主人であるアイメイト使用者とアイメイトは心と心でつながっています。だからこそ、ひとつのチーム・ペアとなってよい共同作業ができるのです。さて、アイメイト(盲導犬)の仕事は、家を一歩出た時から始まっています。アイメイトは、基本的には人間が大好きですから、主人以外の人から声をかけられたり、なでられたり、食べ物を与えられたりすると、そちらに気をとられてしまうことがあるのです。そして、その一瞬は事故に繋がる可能性があります。どうぞ遠くから見守るだけにしてください。もし何か気になることがある時には、使用者に直接、声をかけたり、尋ねたりしてください。

声のかけ方サンプル集:屋外の路上など