アイメイト協会の事業は、たくさんのボランティアの方に支えられています。今回、お話を伺ったのは、東京都にお住まいの衣袋一枝(いぶくろ・かずえ)さん。「飼育奉仕」をされた後、アイメイトの母犬を飼育して出産からアイメイト候補となる子犬を生後2カ月まで大切に育てる「繁殖奉仕」をされています。
参考:アイメイト協会を支えるボランティア家庭
飼育奉仕から、縁があって繁殖奉仕へ
――繁殖奉仕を始めたきっかけを教えてください。
もともと長い間、飼育奉仕をしていたのですが、繁殖奉仕にも興味がありました。体力的にも、トイレトレーニングなどで子犬を追いかけるのが大変になってきたんですよね(笑)。何頭目かの子犬を預かったときに、この子犬が繁殖犬になるのなら繁殖奉仕をやりたいと協会に話していたのですが、その子犬は結局アイメイトになったんです。でも、そのときちょうど繁殖奉仕を待っている母犬がいるという話があって、ご縁を感じて預かりました。初めて母犬を預かったのは、7年ほど前です。
――実際に繁殖奉仕を始めてみてどうでしたか?
最初は犬の出産を見たこともなくて、どうしたらいいのか全然わからなかったので、アイメイト後援会の会長さんに電話して相談したり、ずっとお世話になっている獣医さんに相談したりしました。出産予定日のときにも、獣医さんが「もう生まれましたか?」と電話をくれるなど、すごく助けてもらいました。不安でしたけれど、意外となんとかなりました。
「生まれそうだよ!」ドキドキした初出産
――初めての母犬の出産のときはどうでしたか?
朝、部屋で寝ていたら母犬が急におしっこみたいなポーズをとったんですよね。「えっ、もしかしたら!?」と思ってペットシートを慌てて敷きました。家族にも「生まれそうだよ!」と声をかけて呼びました。そのとき、独立して暮らしていた息子も「出産が見たい」と家に戻ってきていたんです。
出産の瞬間は本当にドキドキしましたけれど、すごく母性の強い母犬で、「全部わかっているよ」みたいな感じだったので、特に問題もありませんでした。子犬たちが無事に生まれてきたときにはやっぱり感動しましたよ。
――現在は、母犬と元母犬の2頭を飼育されているのですね。
それぞれ4回ずつ出産をしていますので、繁殖奉仕としては8回の出産に立ち会ったことになります。何度経験しても、やっぱり出産のときは何があるかわからないので緊張します。でも、いざ始まってしまえば無意識に身体が動くようになりました。
――これまでの出産でいちばん大変だったことは何ですか?
たしか前回の出産のときですが、数頭目の子が大きくて逆子だったので、出てくるまで3時間くらい時間があいたことがありました。少し出てきているのだけど、途中でもう母犬がいきめなくなってしまったんです。そのままだと母犬も子犬も危ないので、そっと私が手で引っ張って取り出しました。すぐに鳴かなかったのでタオルでさすって……。あのときは、さすがにビックリしました。でも、その後、その子犬は元気に大きく育ちました。
「孫よりもかわいい!?」子犬を見守る日々
――産まれた子犬は生後2カ月まで育てますが、その間は目が離せないそうですね。
出産後しばらくは約3時間ごとに母犬が授乳するので、すぐ隣の部屋で私も寝起きしながら見守ります。2カ月の間は母犬の散歩で公園に行く以外は、外出はほとんどできませんね。でも、買い物はネットを使ってできるし、夫も手伝ってくれます。2カ月間と期間が決まっているので、そんなに大変ではないんですよ。たまに夫が私の頼んだのと違うものを買ってくるのが困るくらい(笑)。
振り返っても、「子犬がかわいい」ということしか覚えていません。私にとっては、孫よりもかわいい(笑)。大きくなってくると性格の違いがそれぞれ出てくるんですよね。おっとりして静かな子もいるし、元気な子もいるし、一人でいるのが好きな子もいます。
――小さいうちは、いろいろ心配もあるのではないでしょうか?
離乳食が始まると少し大変ですね。うんちの様子を見ながら健康管理をしているのですが、子犬がたくさんいるので、ちょっと目を離すと誰が下痢をしたのかわからなくなってしまう。断乳した後も、みんな同じ分量を食べられるように、容器に印をつけて一頭ずつ食べさせるようにしています。
――繁殖奉仕の方が子犬の名前もつけるのですよね。
そうなんです。現役のアイメイトや協会にいる候補犬たちと同じ名前ではダメなので、いろいろ考えるのですが、なかなか浮かびませんね。絶対にこの名前なら使われていないだろうと思っても、意外とダメだったりして。ここで生まれた子犬の頭数は全部覚えていますが、名前まではちょっと全部は思い出せないですね。
無事に送り出すときはホッとする
――飼育奉仕も経験されていますが、繁殖奉仕ならではのやりがいは何でしょうか?
飼育奉仕として一頭一頭を成長するまで育てるのも楽しかったのですが、繁殖奉仕では本当に小さい時期に育てることができるので、それもいい経験です。生まれてすぐの子犬の肉球ってきれいなピンク色なんですよ。片手に乗るくらいの大きさだったのが、みるみるうちに大きくなっていきます。
家で犬を飼っていても、何度も出産に立ち会うなんてことはないですよね。普通はできないような、いろいろな経験ができて、楽しいことばかりです。母犬と散歩に行くのを近所の人たちも楽しみにしてくれていて、「おなかが大きくなったね、頑張ってね」と声をかけてくれます。子どもたちや高齢の方からも人気者です。
――2カ月経って送り出すときは、どんなお気持ちなのですか?
悲しいとか寂しいという気持ちはないんですよ。預かっている間にケガをさせなくてよかった、無事に飼育奉仕さんのところに送り出せた、っていう安心感のほうが大きい。とにかく預かっている間はケガをさせないように気をつかっています。なので、ホッとする感じでしょうか。後から「アイメイトになりましたよ」と協会に写真を見せてもらうことがあるのですが、「あんなに小さかったのになあ」と感慨深いものがあります。
ギャラリー
2024年9月17日公開