連載 アイメイト協会の歩行指導 4週間密着レポート

(1)今日から歩行指導がスタート

いよいよ4週間の歩行指導合宿の始まりです。
前半は正しい姿勢や犬への指示など
基礎を身につけることから始まり、
後半では繁華街を歩いたり、
電車やバスに乗る訓練も行っていきます。
これから数回にわたって、レポーター・アイコがその様子を伝えていきますね!

ドキドキの合宿初日!

通年で実施されている歩行指導合宿ですが、各期の生徒さんは原則4名。年代もさまざまです。北海道から沖縄まで、全国からアイメイトの歩行指導を受けにやって来るのだそう。なんと過去にはシンガポールから「アイメイトがいいと聞いたから」と来日して指導を受けた生徒さんもいたとか!

合宿中は個室に泊まり、朝から夕方までほとんど犬との歩行練習。それまで白杖を使っていた人も、到着すると白杖を協会に預けます。アイメイトと一緒なら、白杖なしで歩行できるようになるからです。

到着してすぐに始まる入校式では、生徒の誰もが緊張した様子。眺めているアイコまでドキドキしてきます。でも、あれ? 犬はどこ……?? そう、自分のアイメイトになる予定の犬と対面できるのは明日なんです。

「えっ、3頭目のベテランもいるの!?」

意外だったのは、今回初めてアイメイトを使う人だけでなく、2頭目、3頭目の生徒さんも参加していたこと。つまり、アイメイトが変わる度に、毎回歩行指導合宿に参加しているんです。

2頭目以降ならベテランなのでは、と思いきや、実は「2頭目の生徒がいちばん苦労する」と言われているのだそう。うーん、どうして?!

アイコ:
「何十年もアイメイトと生活してきた経験があるのに、なぜ4週間の歩行指導を毎回受けなくてはいけないの?」

歩行指導員:
「最初のアイメイトと生活するうちに、お互いに『慣れ』で通じるようになっていたことが、新しい犬には通じなくて戸惑う人は多いんですよ。訓練されていても、犬は一頭一頭それぞれ違います。2頭目以降であっても、しっかりと合宿中に基本に戻ること、そして新しい犬との信頼関係を築くことが大事です」

ともに寝泊まりしながら新しいパートナーとの関係をつくるためにも、4週間は最低限必要な期間なのです。

さらに、長年の間についてしまった歩き方のクセを直すことも、歩行指導での重要なポイント。そういえば、街中で見かけるアイメイト使用者さんって、みなさん背筋がすっと伸びて姿勢がきれい。それも歩行指導のたまものだったんですね。

初日はのんびり…なんて甘くはなかった

「今日は初日だし、のんびりするのかな」と思っていたら……違いました。入校式が終わると、さっそく指導が始まります。まずは、引き紐やベッドチェーンといった犬具の使い方から。アイメイトに指示を出すときに使う「声符(せいふ)」(※)も練習します。

事前に自宅で声符を覚えてきているはずの生徒さんですが、緊張して頭の中が真っ白になることも。すると、指導員から「あれれ?」と冗談まじりに突っ込みがはいります。生徒さんも思わず笑顔に。少しずつ緊張もほぐれてきて、和やかな雰囲気です。

※「声符(せいふ)って?」
声符とは、アイメイトへの指示に使う用語のこと。約30種類あります。基本的な声符に、「グッド」(よし)、「オーケー」(指示の解除)、「カム」(来て)、「ドア」(ドアを探して)、「ブリッジ」(階段を探して)などがあります。

テキストはなし。耳と身体で覚える!

午後からは、一人ずつ公道に出てマンツーマンでの歩行指導。歩行指導員が犬の役をしてハーネスの片側をもち、生徒さんはハンドルをもって協会周辺の歩道を歩きます。知らない人が見たら、「何をしているんだろう?」と、びっくりする光景かもしれないですね。これは犬の動きを身体で感じてもらうための訓練なんです。

初日の歩行指導の様子。左が歩行指導員

実は、歩行指導にはテキストが一切ありません。合宿中の生活のこと、歩行のポイントなど、何度も耳で聞き、身体を使って覚えていきます。

「え~、記憶力に自信ない人はどうするの!?」と驚いてしまいましたが、そこは、アイメイト協会のベテラン歩行指導員さんの技の見せどころ! 視覚で確認ができないぶん、言葉や動きなどを使い、相手に合わせたさまざまな工夫をしながら伝えていきます。

さて、翌日は、いよいよアイメイトとなる犬との対面! どんな犬がパートナーになるのか……今夜は、生徒さんもワクワクして眠るのではないでしょうか。

2019年5月7日公開