連載 アイメイト協会の歩行指導 4週間密着レポート

(5)人混みの繁華街を歩く  

4週間にわたる歩行指導合宿の様子をレポーター・アイコがお伝えするコラムです。
合宿も後半になり、内容もどんどん応用編に。人通りの多い繁華街での歩行指導、電車やバスなど公共交通機関での練習が始まります。

思わぬ障害物がいっぱい!!

前回は、基礎をしっかり身に着けるAコースでの歩行指導の様子をレポートしました。合宿中は、ほかにも踏切の横断やエスカレーターの利用も練習しながら駅まで歩くBコース、歩道がなく交通量の多いCコースなど、特徴の異なるコースを使ってアイメイトとの歩行練習を重ねていくんです。                                                     

今回やって来たのは、百貨店や大きなアーケード商店街もある繁華街。合宿3週目から練習が始まるDコースです。これまでのコースと違ってお店も人通りも多く、商店街は行き交う買い物客でいっぱい!

Dコースは、人も障害物になるものも多くて難易度が高そう! ここでの歩行指導のポイントはなんですか?

これまでにも電柱や植え込みなどの動かない障害物をよけて歩く練習をしてきましたが、Dコースには歩行者がたくさんいます。人波に流されてしまうと、自分が向いている方向がわからなくなることもあるんです。歩行者や障害物をしっかりよけながら、きちんと歩けるように練習します

Dコースを歩く生徒さんの後ろを、アイコも邪魔しないようについていきましたが、お店の軒先に商品があったり、歩道上に看板が置かれていたり……普段は意識していなかったけれど、繁華街にはぶつかりそうなモノだらけでヒヤヒヤ。人混みのなかでは、アイメイトの存在もあまり気づかれません。 

そんななかで、生徒さんはアイメイトに指示を出しながら、「道の左側に寄る」という基本に沿って歩きます。アイメイトがいる左側に寄ることで、障害物を安全によけ、道の真ん中に出てしまうことも防げるのだそうです。

歩行者や自転車、看板や商品などもあって、商店街をまっすぐ歩くのは大変!

 

道を間違ってもノープロブレム!?

生徒さんは事前にコースの道順を覚えてきていますが、歩いているうちに道が分からなくなってしまうことも……。でも、それは決して「マイナス」ではないのだそう。大切なのは、もう一度ちゃんと正しいコースに戻ること。そのため、周囲にいる人に声をかけて道を尋ねる方法も学んでいるんです。

道を尋ねるにもコツがあるんですよ。たとえば相手が『イエス』か『ノー』で答えやすい質問をすること。「ここはどこですか?」と漠然と聞くより、覚えてきた目印を使って「左の角に●●百貨店はありますか?」「ここは●●の通りですか?」と聞くと、相手も答えやすいし、間違いが防げますよね

なるほど~。

 ちなみに、使用者と外出しているときのアイメイトは「お仕事中」。もし、街中でアイメイトを見かけることがあっても、頭をなでたりしてはダメなんですって。私も気を付けなくっちゃ!

 無事にDコースのゴール地点にたどりついた生徒さん。ほっとした表情で「よく頑張ったなあ、ありがとう!」とアイメイトに声をかけていました。

電車やバスの練習もスタート

さらに、合宿後半では、公共交通機関を利用する練習も始まります。

駅の改札、ホーム、乗降、車内など、鉄道を安全に利用するため、各場面で必要な練習を繰り返す

そういえば、視覚障害のある人はどうやって券売機で切符を買うのでしょうか。実は、タッチパネル式券売機についている数字キーの「*」を押すと、音声ガイダンスが流れるようになっているんです。知らなかった~!

 「カイサツ」という声符で、アイメイトが自動改札機を探します。生徒さんは駅のホームでどちらの方向から電車が入ってくるかを音で確かめ、電車とドアの間のすき間も右足でしっかりと確認してから乗車していました。

「カイサツ」の声符で、アイメイトが自動改札機を探し、鼻で指し示す

電車やバスの車内では、ほかの乗客の妨げにならないようにアイメイトを使用者の足元に入れて、しっかりと伏せさせます。とっても行儀よく、すっぽりとおさまっているので、パッと見ても気づかないほど!

 卒業後は、通勤や通学などでアイメイトと一緒にバスや電車を日常的に使う生徒さんも多くいるんですって。公共交通機関を安全に利用できるようになれば行動範囲が広がりますね。

 さあ、歩行指導合宿も、いよいよ残りわずかになってきました。

2019年10月8日公開