4週間にわたる歩行指導合宿の様子をレポーター・アイコがお伝えするコラムです。
アイメイトと公道を歩く訓練は、まず道順をしっかり覚えるところから。「安全な歩行」のために、歩行指導員や生徒さんはどんなことに気を付けているのでしょうか?
頭に地図を描いて歩く
公道を使ったアイメイト協会の歩行指導で、最初に歩くのは協会周辺の比較的まっすぐな歩道の「Aコース」。ここでは、アイメイトとの歩行の基礎や信号判断、横断歩道の利用などを学びます。
実は……わたし、アイメイトがいたら目的地まで勝手に連れて行ってくれるものだと勘違いしていたんです。よく考えてみたら、使用者が地図を覚えて、曲がる場所などをアイメイトに指示しないと目的地にはたどり着けないんですよね?
そうなんですよ。コーナー(交差点ごとの段差)の数や信号の有無、大通りの名前、車の流れ、お店から聞こえてくる音などを手がかりにして、使用者がアイメイトに道順を指示しているんです。
では、生徒さんたちは、どうやってコースの道順を覚えるのでしょうか? ふと見ると、生徒さんの手元に何やら模型のようなものが・・・。
実はこれ、「触地図」と呼ばれる視覚障害者向けの立体的な地図。生徒さんたちは、触地図をもとに「2本目(のコーナー)に信号あり」「3本目をレフト」というように、コースを歩く前に必ず道順を記憶しているんです。
歩道には思わぬ危険がいっぱい
公道での歩行指導は、基本的にマンツーマン。歩行指導員さんが生徒さんと犬の後ろについて安全を確保しながら、正しい歩行ができているかを確認します。
生徒さんは、とっても緊張している様子。まだ犬との息も合っていないため、声符の指示もうまく伝わりません。
歩いているうちに方向が分からなくなってしまうこともありますが、そんなときは、大通りを走る車の音、コンビニやパチンコ屋さんの音なども手掛かりになるんですって!
道順は、2本目に信号があるとか、左角にガソリンスタンドがあるとかを目印にしています。周囲の音や匂い、空間の開けた感じなどでもわかるんですよ
Aコースは比較的まっすぐな歩道といっても、脇を走り抜けていく自転車がいたり、植え込みの植物が飛び出ていたり、路上に看板があったり……そう、歩道にも思わぬ危険がいっぱいなんです。
アイメイトは使用者が障害物にぶつからないように歩きます。車が飛び出てくれば急に止まったり、後ずさりしたりすることも。アイメイトを信頼して、その動きに沿ってスムーズに歩けるようになることも大事。正しい姿勢や動き、声符の使い方に慣れるまで、何度もコースの練習を繰り返します。
「今日一日で、10カ月分も練習したみたいに疲れた!!」
初めてAコースを歩き終えた生徒さんの正直な感想にも納得です。
雨の日も、雪の日も・・・
コースでの歩行指導は晴れの日だけとは限りません。雨の日にも、防水の上着にレインハットをかぶってアイメイトと歩きます。雨の日は、生徒さんにとって周囲の音が聞き取りづらく、足元も悪いため、普段よりもいっそう慎重になります。
雨の日は外での歩行指導はお休みじゃないんですか?
いえいえ、雨の日も雪の日も歩行指導は行いますよ。修了したら、生徒さんは雨の日だって仕事に行きますよね。天気に関係なく、安全に歩けるように歩行指導をするんです。ちゃんとアイメイトに教えれば、水たまりもよけてくれますよ
協会内にはドアも段差もあるんです
もちろん室内でも歩行指導は続きます。アイメイト協会の建物はバリアフリーなのかなと思っていたのですが大間違い。入口のところから階段があり、あちこちに段差があるんです。しかもドアノブの形もさまざま。これも全部練習のため!
合宿1週目は、ひたすらこの「Aコース」を練習。2週目からは、最寄り駅まで行き、エスカレーターや踏切などの利用を学ぶ「Bコース」、歩道がなく交通量の多いところを歩く「Cコース」での歩行指導が始まります。
次回は、合宿3週目後半から始まる繁華街を歩く「Dコース」、そして電車やバスなどの練習をレポートしたいと思います!
2019年9月6日公開