障害の有無にかかわらず、スポーツ観戦を楽しんでほしい!
――NPO法人日本ブラインドサッカー協会 大会・地域連携事業部 宮島大輔さん
日本ブラインドサッカー協会では、「ブラインドサッカーを通じて、視覚障がい者と健常者が当たり前に混ざり合う社会を実現すること」というビジョンを掲げている。国内で行われるブランドサッカーの試合では、障害の有無にかかわらず誰もが観戦を楽しめる環境づくりにも力を入れてきた。
そのきっかけとなったのは、2014年に行われた世界選手権大会だ。この大会で初めてチケットを有料化する際に、障害者割引料金を設定するかどうかで議論になったという。
「協会のビジョンを達成するためには、同じ料金で障害の有無にかかわらず同じようにスポーツ観戦を楽しめるサービスやツール、環境を整えることが大事だろうということになり、リレーションセンターTASKALが誕生したのです」と話すのは、大会・地域連携事業部の宮島大輔さん。
各大会の会場に設置された「リレーションセンターTASKAL」では、さまざまな団体と協力をしながら、誰もがスポーツ観戦を楽しめる環境づくりに取組んでいる。
たとえば、公益財団法人日本ケアフィット共育機構が認定する「サービス介助士」(リレーションクルー)が常駐し、車椅子使用者のお手伝い、視覚障害者の手引き、手話通訳などに対応。また、視覚障害者がリアルタイムで試合の様子を知ることができるように、音声ガイドシステムを使った実況中継も行なう。そのほかに、会場の触地図ガイドブック、筆談ツール、補助犬用トイレの用意などサービスは幅広い。
このリレーションセンターを担当する宮島さんは、日本ブラインドサッカー協会で働きながら大学院に通い、障害者のスポーツ観戦についての研究にも取り組んでいるという。子どもの頃からサッカー観戦が大好きだった宮島さんは、18歳のときに事故によって車椅子で生活するようになった。サッカースタジアムにも車椅子席はあるが、それまで観戦していたようなにぎやかなエリアではなく、どこか物足りない思いを感じていたと話す。
「大学卒業後、リレーションセンターのことを知り、最初はボランティアスタッフとして日本ブラインドサッカー協会にかかわり始めました。車椅子でボランティアとして参加することには不安もありましたが、視覚に障害のある子どもたちがブラインドサッカーの選手をみて『頑張ろう』と思ってくれるように、僕も少しでもそんな存在になれたら嬉しいです」
そんな宮島さんにとって印象に残っているのは、2017年7月の日本選手権大会のときのこと。それまで使っていた「車椅子席」という名称を、スタンド席に上がるのが難しい人であれば誰でも利用できるようにと「アクセシビリティエリア」に変えたのは、この大会からだった。
「片麻痺のお客様がリレーションセンターにいらして、スタンド席には上がれないけど試合を観られる席はないかと言われました。そこでアクセシビリティエリアをご案内したら、帰り際に『片麻痺になってから観戦に行かなくなっていたんだけど、今日は来てよかった』と声をかけてくれたんです。この取り組みをやっていて本当によかったと感じた瞬間でした」
宮島さんは、リレーションセンターのような取り組みがもっと広がり、ブラインドサッカーだけでなく、どんなスポーツでも障害の有無にかかわらず楽しめる社会になってほしいと話す。
「初めてブラインドサッカーを見たとき、視覚障害のある方がピッチのなかで自由自在に動いていることに、純粋に『すごい!』と感動しました。街中でも同じように、障害のある人たちが自分の意思で自由に動ける環境をつくっていけたらいいなと思っています」
2020年2月27日公開