連載 アイメイト協会の歩行指導 4週間密着レポート

(3)アイメイトと社会に出るために

4週間にわたる歩行指導合宿の様子をレポーター・アイコがお伝えするコラムです。
全国から歩行指導を受けに来た生徒さん。宿泊施設ではどう過ごしているのでしょうか?
今回は、合宿中の生活についてレポートします!

家族と離れて過ごす4週間

歩行指導合宿中、全国から集まった生徒さんたちは、アイメイト協会の建物に4週間泊まり込みます。年代もさまざまな生徒さんたちの合宿生活って、どんな感じなのでしょうか? 

生徒さんの個室をのぞかせてもらうと、ベッド、デスク、洗面所、クローゼットなど、生活に必要なものが揃っていました。もちろん、アイメイトとなる犬も同じ部屋。この4週間、朝から晩までずっと一緒に過ごすのです。

寝具などが入る前の部屋の様子。左にアイメイトのスペース

建物内には、食堂、浴場、ランドリールームなどもあります。各部屋のドアには点字が貼ってありますが、それ以外には、視覚障害者向けに配慮した設備はないようです。 

その理由を歩行指導員さんに尋ねてみると、「生徒さんがアイメイトと実生活を送ることを想定しているからなんです」という答えが返ってきました。 

廊下には共用の掃除機置き場があり、合宿の間、生徒さんたちは部屋の掃除、衣類の洗濯、そしてごみの分別まで、すべて自分たちで行うのだそうです。

わたしのお父さんと同じくらいの方もいらっしゃいますけど、掃除や洗濯、ゴミの分別も全部自分でするんですね……!?

家事に慣れていない方もいらっしゃるかもしれません。でも、アイメイトを使用する目的は、『社会に出て“参加”すること』。4週間の合宿生活では、歩行技術だけではなく、『自立の力』を身に付けてほしいと思っています。だから、生活訓練も同時に行なっているんですよ。

骨のある魚もメニューに!?

朝昼晩の食事は、基本的に食堂で担当指導員と生徒さんが一緒に食べます。食堂の扉を開けると、キッチンからおいしそうな匂い! ぐううう……お腹が減ってきました(笑)

食事の位置は、「4時の方向にお味噌汁、6時にお箸、7時にごはんがありますよ」という風に、時計の文字盤にたとえた「クロックポジション」を使って説明しています。

お皿の配置だけでなく、一枚のお皿のなかに複数のおかずが載っているときも、クロックポジションを使います。

位置の説明は、時計の針が進む右回り順で伝えるのが基本。クロックポジションは、場所や方向を説明したいときなど、さまざまな場面で使われます

 

食事のメニューにも特別な気遣いはありません。骨のある魚料理だって登場します。これも、やはり社会に出たときに役立つように、という考え方からなんですね。 

ご飯を食べながら、「今日は、あそこが難しかったなあ」と本音もポロリ。感想を言い合ったり、お互いの趣味の話をしたり、食事の時間はホッとくつろげるひとときです。 

日曜日以外、朝から夕方まで歩行指導がありますが、その合間にほかの生徒さんの部屋を訪ねておしゃべりする人、趣味のピアノやハーモニカを楽しむなんていう人も……! 生徒のみなさんは、息抜きもしつつ、励まし合って頑張っていました。

部屋にいるときも、食事のときも、アイメイトになる犬とはいつも一緒

そういえば、夕方以降に部屋を使うときには『電気をつける』という指導をされていました。あれは、どうしてなんですか?

視覚障害者にとっては、部屋の電気はつけなくても困らないものです。でも、もし真っ暗な部屋に人がいたら晴眼者はビックリしてしまいますよね。そうした社会で一般的に行われている習慣を身に付けることも大切にしているんです。

なるほど~!アイメイトと歩けるようになった先のことまで考えて、合宿中の生活があるんですね。訓練は歩くだけじゃないなんて、目からウロコの発見でした。

さて、次回は公道での歩行指導の様子をお伝えします!

 

2019年7月17日公開