現在、日本で活躍する盲導犬の数は、国内に11ある盲導犬協会の卒業生すべてを合計しても約850頭(2022年3月)と、多くの人はアイメイト使用者に出会ったり生活している様子を見たりする機会がないのが実情だと思われます。
今回、当ホームページでは、アイメイト使用者がどんな暮らしをしているのかをご紹介しようと、アイメイト使用歴7年(取材時)の久我裕介さん(千葉県庁勤務)にご協力いただき、その1日を追いました。
久我さんは、25歳のときに視力を失い、白杖を使用した後、アイメイト使用者となりました。「この子がいるから当たり前の生活ができる。目が見えないことは不便ですが決して不自由ではない」と話します。
5時 起床
アイメイトの世話
- ワン(おしっこ)ツー(大便)をさせる
- お水、エサやり
- 歯磨き(軍手をはめて1本ずつ丁寧に磨く)
耳そうじ
匂いの原因にもなるので、歯石や耳垢、ブラッシングなど入念に手入れをして、常に清潔を保つことを心がけています。
6時 朝食・出勤準備
衣服は、洋服店で店員さんと相談しながら選んだ何組かをセットで購入しています。スーツ、Yシャツ、ネクタイはセットにして、順番に身に付けるようにしています。
アイメイト基礎訓練
ハーネスを付けた状態で「カム(おいで)」「スィット(座れ)」「ダウン(伏せ)」などの確認をします。外出前に基礎訓練を行うことでアイメイトは落ち着いて行動ができるようになります。
7時 出勤
目の見えない私が安全に行動するためには、時間的な余裕が必要です。駅の混雑や電車のラッシュを考慮して、朝・夕共に時差通勤をしています。
久我さんがハーネスを手にするとアイメイトは尻尾を振って玄関に向かいます
どこへ行くにも背負っていくリュックには、自分の荷物はもちろん、水やレインコートなどアイメイト用のグッズが詰まっています
出勤です。アイメイトと一緒に駅まで歩きます
電柱などを避けながら歩道の左側を歩きます
久我さんの指示に従って横断歩道を渡ります
通勤ももちろん、アイメイト(盲導犬)と一緒です。勤務先へは電車を乗り継いで向かいます。途中、横断歩道や階段、エスカレーター、エレベーターなども利用します。毎日同じ時間、同じ車両に乗っているので、周りの人は状況を理解してくれていますから、何かあれば声をかけてくれます。
アイメイトの鼻先をたどっていくとICカードをタッチする場所があります
階段やエスカレーターを利用します
8時 勤務先である県庁に到着・執務開始
アイメイトが座る場所を鼻先で案内してくれます
アイメイトは久我さんのデスク近くの定位置で待機します
時間を見計らって、アイメイトをトイレ(ワンツー)へ連れて行ったり、水をやったりしています(季節や体調によって水の量や飲ませる回数は調節しています。
視覚障害者用のツールを使いながら効率的に仕事を進めます
視覚障害者用のツールを使ったり、嘱託の補助職員の手を借りたりしながら、執務をこなしています。エクセルはマクロを組むなど、ルーティン業務の効率化を図るための工夫もしています。
12時 昼休み
昼食は職場で注文したお弁当を同僚と食べています。アイメイトのワンツーや水やりも行います。
13時 執務
障害者の就労支援をする業務に携わっています。会議に出席したり、資料を作ったり、ときには中学生などを対象に講演を行うこともあります。
17時 退勤
ラッシュをさけるため、朝夕とも時差通勤をしています。
駅では、アイメイトと一緒に階段の左側を歩きます
アイメイト(盲導犬)を連れていなければ、多くの人は視覚障害があることは気づきません
17時30分 碁会所へ
月に何度か、平日の夜に友人と食事をしたり、趣味の囲碁をするために碁会所に出かけたり、余暇を過ごしています。休日に、旅行やクライミングジムに行くこともあります。
碁会所に着きました。アイメイト(盲導犬)の鼻先をたどった場所にドアノブがあります
視覚障害者向けの碁盤を使って囲碁を楽しみます
アイメイトは足元で伏せ。碁会所に入る前には、必ずトイレ(ワンツー)を済ませます。
19時 帰宅
アイメイトの世話
- 玄関でブラッシング
- 水やり
- トイレ(ワンツー)
- ハーネスを外してハウス(定位置)へ
夕食
1日のできごとを妻と話しながら食事をします。休日には二人で外食したり、居酒屋に出かけたりして過ごすこともあります。
家にいるときはアイメイト専用の「ハウス」にいます
21時 くつろぎの時間
テレビを見たり、友人からのメールをチェックしたり、妻と話したり、のんびり過ごします。アイメイトはいつの間にか寝ています。ときどきかわいいいびきが聞こえてきます。